筑西まで41キロ整備へ

参照:茨城新聞
鬼怒川沿いに整備されるサイクリングロード(自転車歩行者専用道路)が、常総水害後の地域活性策として注目を集めている。常総市では堤防工事がおおむね完了したことを受け、7月から一部開通。市内では観光誘客につなげようという機運が出始めている。(常総支局・今橋憲正)
▽活用策を提言
8月31日、サイクリングロードを茨城大学の大学院生4人が自転車で走った。常総市に活用策を提言するためだ。「川がきれいで見晴らしが良い」「道幅が広いから走りやすい」。学生たちから笑みがこぼれた。
自転車で走った体験や市民アンケートを基にアイデアを練り、2日に市幹部らの前で発表した。高速道路の出入り口をイメージした標識の設置や、タイヤのパンクに対処する協力店の募集など、さまざまな提案がなされた。
リーダーの原悠馬さん(23)は「アンケートでは幅広い層から熱い意見が寄せられた。それだけ、市民が期待している気持ちの表れ。魅力的なサイクリングロードを造ってリピーターが増えれば、常総水害など町の歴史を広めることにもつながる」と話す。
▽ルール・マナー
サイクリングロードの整備は、小貝川と合わせ、常総市を含む7市町が国土交通省の支援制度を活用して取り組んでいる。4年前の関東・東北豪雨後に始まった堤防整備の一環で、完成した堤防上の管理用道路(幅員6メートル)を活用する。常総市では左岸6・4キロ、右岸8・5キロの区間で開通済みで、10月以降は左岸全ての17・8キロで通れるようになる見通しだ。
これに伴い、堤防の工事業者が河川敷で伐採した木材を使いサイクルスタンド20基を製作し、常総市に寄贈。市はPR用ののぼり旗とともに、市内の飲食店などに貸し出しを始めた。
市都市建設部の穴原一幸参事は「これから大勢のサイクリストが来ることが予想される。歩行者との事故を避ける対策も必要」と指摘。そのため市は、自転車利用者のルールやマナーを書いた看板を試行的に設置。今後も啓発活動に取り組むことにしている。
▽心象風景
一方、地元商業者もサイクリングロードには大きな期待を寄せている。同市水海道橋本町で自転車店を営む石塚理治さん(50)は「このチャンスを生かせるように、われわれ商店主は知恵を絞らないといけない」。
同市本石下の団子店経営、中山忠男さん(55)は「来た人と交流を深めたい。水害で被災した時の写真も見てもらい、復興できた思いを伝えられれば」と語る。
サイクリングロードの開通は今のところ常総市だけだが、国交省では2〜3年後を目標に筑西市までの41キロ区間全線で利用できるようにする計画だ。
学生たちを指導した茨城大の伊藤哲司教授は「南北をつなぐ幹線としての役目はもちろんあるが、学生の発表にもあった『心象風景』としての捉え方もしてほしい」と期待。
「未来を担う中高生が堤防を自転車で走り、古里の風景を心に刻む。そして大人になり、愛着をさらに感じる。サイクリングロードには人それぞれの物語を生む役割もある」と話している。
■23日、記念フェスタ
常総市はサイクリングロード開通を記念し、23日に「鬼怒川サイクルフェスタ」を開く。鬼怒川と小貝川の両堤防を結んだ40キロの周回コースと、関東鉄道を利用する片道10キロのファミリーコースを用意。先着300人程度で、希望者は17日までに申し込む。
当日は同市新石下の地域交流センター「豊田城」駐車場に集合。受け付けは午前9時半から、スタートは同10時20分からを予定する。参加費は1人500円(保険代含む)。ヘルメットは必ず着用。最後に市の名産品が当たるプレゼント抽選会がある。
申し込み方法は市のホームページから申込書をダウンロードし、同市都市計画課にメールかファクスする。問い合わせは同課内の事務局(電)0297(30)6202。
記事元:茨城新聞