
参照:長崎新聞
長崎県雲仙市の雲仙温泉街で、電動自転車のレンタルサービスが始まった。道路が狭く高低差があるため、自転車には不向きと言われていた温泉街。「電動ならば」と実験的に導入し、新たなアクティビティーの開発を目指す。集客や地域活性化の一助になり得るのか-。晩秋の雲仙路を疾走してみた。
レンタルサービスは、旅館の雲仙福田屋が9月、レストラン「グリーンテラス雲仙」が今月から開始した。それぞれマウンテンバイクタイプの2台を導入。色はいずれも赤と黄色。街でよく見かける「ママチャリ」型を想像していたが、若者が好みそうなおしゃれなデザインだ。大自然によく似合う。
■坂道ぐんぐん
電源を入れてペダルを踏み込む。「あっ」。思わず声が出た。かすかなモーター音が足元に響き、背中を押されるように自転車がぐんぐん坂道を上る。これが電気の力か。ペダルの軽さに思わず笑みがこぼれた。車と違って周りの風景が近い。自由なペースで楽しめる。
観光地など初めての土地にありがちな「車だと道が分からず怖い」「歩きだと遠くて疲れるのでは」といった心配も無用。気の向くままに走り、「おしどりの池」のほとりにある「大黒天」に到着した。森の中にある切り立った岩に刻まれた磨崖仏。車では入れない隠れた名所だ。ここで休憩。池と森の静けさをしばし楽しむ。
■野鳥さえずり
次は約3キロ離れた「白雲の池」に向かった。標高約700メートルの雲仙温泉街。ひんやりとした風が頬に当たって心地いい。澄んだ空気が肺と心を満たす。山は赤や黄色に染まり、脇道に入ると木漏れ日が差す。風の音と野鳥のさえずり。車の運転席では気付かなかった感覚が、五感を次々と刺激する。
約10分後、目的地に到着。写真愛好家が「チャリ、気持ちよさそうね」とうらやましそうに話し掛けてくる。笑顔で応え、優越感とともに木々の下を走り抜ける。
最後は「小地獄」から「雲仙ゴルフ場」に抜ける林間道路へ。たまに止まってぼんやりと景色を眺め、撮影スポットを探してまた移動。こんな楽しみ方も自転車ならでは。
あっという間の1時間。走行距離は約7キロ。電動自転車の強みを生かして「仁田峠」まで頑張った観光客もいたそうだ。雲仙福田屋の福田努社長は「雲仙の自然を手軽に満喫できるツール。登山と並ぶ観光資源に育てていきたい」と話す。満足感と快適さに魅了された記者は「これ(電動自転車)、どこで買えますか?」。赤いボディーに物欲まで刺激された。
■電動自転車のレンタルサービスは福田屋が1時間1500円(宿泊客1000円)からで、5時間5000円(同3500円)。午前7時~午後6時。グリーンテラス雲仙が1時間1500円から。午前11時~午後4時。

参照:長崎新聞

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記事元:長崎新聞