バイク

フェラーリ×ビアンキがコラボした究極のロードバイク

知れば知るほどオモシロイ、深淵なる自転車の世界。日本で“もっとも多くの自転車に乗った男”、自転車ジャーナリストの菊地武洋が、“ちょいマニアック”にその魅力を伝える。

© Olaf Pignataro
参照:GQjapan

30年前に始まったフェラーリとロードバイクの関係

“イタリアン・ロードバイク”という響きには、自転車好きをわくわくさせる“何か”がある。このビアンキとフェラーリのコラボモデル「スクーデリア・フェラーリ01」などは、言わばその最高峰だ。なにしろイタリアの名門同士のダブルネームなのだから……。

「フェラーリ」が関わるロードバイクが初めて登場したのは30年前の1989年。レーシングバイクで知られるコルナゴ社の35周年モデル、「C35」の開発にフェラーリが携わり、フレームとカーボンコンポジットホイールを製作したのがはじまりである。スチールフレームが全盛を誇っていた時代に、170万円という価格も驚きだったが、何よりカーボンフレームの圧倒的な性能の高さは、まさに“未来”のバイクというべき高性能ぶりだった。以後、限定モデルの販売が継続されてきたが、フェラーリの創業70周年を機に、パートナーがビアンキへと変わった。

コンポーネントパーツはカンパニョーロ社の最高級モデルスーパーレコードEPS。電動変速システムは前後の変速機が呼応し、メカが最適な位置になるように自動的に動く。サイズ:47、50、53、55、57、59、61㎝。税抜価格:シマノDURAACE Di2モデル2,000,000円、カンパニョーロ スーパーレコードEPSモデル 2,200,000円
© Olaf Pignataro
参照:GQjapan

イタリア語で“青空”を意味するチェレステというオリジナルカラーで知られるビアンキは、1885年に創業した、現存する最古の自転車メーカーだ。かつてモーターサイクルやクルマを生産していたこともあり、クルマ好きであれば「アウトビアンキ」の名前を思い出す人もいるだろう。現在は自転車の専門メーカーで、子供用自転車からツール・ド・フランスで使われるレーシングバイクまでを手掛けている。

「SF01」のベースとなったのはビアンキの最高級モデル「スペシャリッシマ」だ。フレーム素材は高弾性糸カーボンをベースに、振動減衰性に優れるカウンターヴェイルという特殊繊維を採用。この特殊繊維は自転車界ではビアンキのみが使用する素材で、振動を最大80%カットする。すなわち高い剛性と快適な乗り心地を両立する狙いで設計されている。

シート部にもプランシングホースが描かれている。シートチューブ上端はクランプバンドによる剪断荷重をさけるためサイドに割りが入っている。
© Olaf Pignataro
参照:GQjapan

低速でも路面状況を漏らさず伝える乗り心地は、初心者にとっては快適とは程遠く感じるだろう。しかしSF01は速く走らせるほど、その乗りやすさが際立ってくる。振動のボリュームは変わらないが、すぐに振動が収束するので、タイヤのグリップや柔軟性が掴みやすい。それゆえ路面が悪くなるほど、一般的なロードバイクとの違いが際立つのだ。

ヘッドチューブはビアンキではなく、フェラーリのエンブレムが。ビアンキのマークはシートチューブにペイントされている。
© Olaf Pignataro
参照:GQjapan

フェラーリ×ビアンキ第2弾はトライアスロン用バイク

タイヤを使って走る乗り物を操るポイントは、いかにタイヤの性能を引き出せるかにかかっている。グリップを感じられなければ速く走ることはできないし、そこをつかむことができれば、思いどおりに走らせるのは難しくない。だがレーシングバイクも含め、タイヤの感覚がつかみやすいバイクというのは、思ったよりずっと少ない。

SF01は伝統的なリムブレーキを採用している。最近のロードバイクはディスクブレーキ化が進み、筆者もディスクブレーキ推進派であるが、このバイクに関してはリムブレーキ仕様で正解だと思う。理由はその「軽さ」にある。

ホイールはスクーデリア・フェラーリの特別グラフィックが施されたフルクラム・スピード40C。タイヤはピレリのクリンチャータイプ(25C)を標準装備。
© Olaf Pignataro
参照:GQjapan

フレーム重量780g。これは高級なカーボンフレームの中でも相当に軽い。重量は登坂や加速性能に大きく影響し、駆動部では50gの違いを体感できる部品もある。SF01はその軽さを活かした加速の鋭さが命だ。そこでディスクブレーキ化による制動力アップと重量増とを天秤にかけるなら、リムブレーキのアドバンテージを活かしたほうがいい、と筆者はかんがえる。

少々マニアックな話になったが、上質なバイクは初心者が乗っても安全で快適だ。近所を自分のペースで走るときであっても、高性能なロードバイクを操る満足感は得られる。

ビアンキとフェラーリのコラボは「スクーデリアプロジェクト」としてこれからも展開される。第2弾としてトライアスロン用バイクの開発が進められており、電動アシストのEマウンテンバイクやシティコミューターバイクなども予定されているという。

現在のビアンキを象徴するテクノロジーのカウンターヴェイルのロゴがシートステーに。
© Olaf Pignataro
参照:GQjapan
カラーはROSSSO CORSA(レッド)とNERO SETOSO(ブラック)の2色。
© Olaf Pignataro
参照:GQjapan

文・菊地武洋

記事元:GQjapan

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