声優の野島裕史が、自転車をテーマにお届けしているTOKYO FMの番組「サイクリスト・ステーション ツアー・オブ・ジャパン」。1月5日(日)の放送では、元プロ・ロードレーサーで、日本最大級のロードレース「ツアー・オブ・ジャパン」大会ディレクターの栗村修(くりむら・おさむ)さんをお迎えして、2019年の自転車業界について振り返りました。

参照:TOKYO FM+
★“村社会”を壊すことで得られた、白熱のレース展開
栗村:2019年5月に開催された日本最大規模の自転車ステージレース「NTN presents 2019 ツアー・オブ・ジャパン」は、東京五輪の日本代表選考ランキングの対象レースになっておりました。実は、自転車ロードレースの日本代表選手が決まるのが、2020年7月の東京五輪の自転車ロードレース開催わずか2ヵ月前の「NTN presents 2020 ツアー・オブ・ジャパン」終了直後。代表選手の選考ランキングポイントの対象レースとして、2019年大会と2020年大会の2大会が組み込まれます。
これまでは、有名チームや有名外国人選手を積極的に呼んで、一般的な主催者としての戦略として、お客さんを集めようと考えていたのですが、昨年の大会は、あえて海外のトップチームを呼ばず、日本人選手の代表選考レースを白熱したものにしようと取り組みました。結果、終盤まで総合優勝争いがもつれて面白いレースが観られたので、これは“アリ”だと思いました。
野島:これまでの大会との一番の違いは何でしょう?
栗村:自転車レースは面白いもので、とくに海外でネームバリューのあるチームや選手が来ると、みんな萎縮しちゃうんです。自転車レースはマラソンと違って、先頭集団や一番大きい集団が作る“村社会”みたいなところがあって、力のあるチームや選手が入ると、全体が“右へならえ”みたいになることがあります。大きいチームや強いチームが来ると、レース展開がすぐ落ち着いちゃうんですけれども、2019年はそれがなかった。
例えば、周回コースの急坂に入る、道が狭くなるポイントのところで、毎周激しい1位争いが繰り広げられました。選手からは「栗村さん、今年はレースが危なくて疲れちゃうんですよ」と言われたのですが、僕は「しめしめ」と思いましたね。
★総合優勝は逃したものの……地元フランス勢の活躍に今年も期待!
栗村:「ツール・ド・フランス 2019」(世界最大級の自転車ロードレース)は、地元フランス勢が活躍し、面白かったです。近年、地元フランス勢は総合優勝争いから遠ざかっていました。総合2、3位になる選手はいたんですけれども、なかなか優勝に届かなかったのです。
でも、2019年はティボー・ピノ選手やジュリアン・アラフィリップ選手が、終盤まで総合優勝できるかもしれないという活躍を見せた結果、沿道のお客さんの盛り上がりが全然違ったんです。現地に行っている記者の方に聞いても、例年に比べて沿道に来ている子どもの数が多いというコメントもありました。やっぱりスポーツというのは、地元の選手たちの活躍がすごく大切なのだと、2019年大会を見て痛感しました。
★日本でも人気急上昇中! あらゆる可能性を秘めたスポーツe-バイク
栗村:海外では、スポーツタイプの電動自転車が物凄い勢いで進化しています。スポーツe-バイクとも言いますが、競技としてロードバイクに乗っていた人間としては、最初にスポーツe-バイクというものが出てきたときに「もう、意味が分からない」と……。
野島:僕も、最初はそう思いました。
栗村:「どうして自分の力で走って体を鍛えようとしているのに、電動ユニットを載せてくるんだ!?」という感じがして。でも、海外での使われ方、どんな需要があるのかを調べていくうちに、すごく“アリ”だということがわかりはじめました。
ヨーロッパでは、マウンテンバイクのe-バイクが非常に流行っています。なぜかというと、ヨーロッパの山々にある、伝説の峠を自転車で越えるのが1つのステータスになっているからです。時間とお金に余裕ができた年配の方が、夢だった峠越えをしたいと思ったときに、体力がないというところで、e-バイクがその需要にはまったのです。
日本の生活環境のなかでは、通勤と相性が良いということがわかりました。往復距離が長い方、片道が30kmとかになると、会社に着く頃には、もう仕事にならない。途中に坂道、信号もあります。そういうところで自分が求めている以上の運動をしなきゃいけないから自転車通勤をしないという方がいらっしゃるんですれども、こういう運動強度の調整してくれるのがe-バイクなんです。帰り道は、電動をオフにして帰れば運動強度が上がります。
ほかには、カップルでのサイクリングが挙げられます。ご夫婦で自転車に乗る場合、彼女・奥様が、彼氏・旦那様のスピードについていけないと、両方ともストレスになってしまうんですが、女性側がe-バイクに乗ることによって、その力量差を縮めることができる。
下手すると、登り坂で旦那さんを引きずりまわして、立場が逆転するという、奥様の日頃のストレス発散ツールとしても可能性を秘めた乗り物(笑)。そんなe-バイクに、2020年はさらに注目していきたいと思っています。
<番組概要>
番組名:サイクリスト・ステーション ツアー・オブ・ジャパン
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国22局ネット
放送日時:TOKYO FMは毎週日曜朝5:00~5:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトおよびアプリ「JFN PARK」でご確認ください)
パーソナリティ:野島裕史
番組Webサイト:http://www.jfn.jp/toj
番組公式Twitter:@TOJ_info
記事元:TOKYO FM+