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「自動車が乗り入れない都市」を模索する世界の潮流、その成果は

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都市部への「自動車乗り入れを禁止」は世界的に広がっている ノルウェー・オスロ nouchka -iStock
参照:Newsweek

<都市部への自動車乗り入れを禁止とする動きは、世界的に広がりを見せている。各地の反応もさまざまだ ……>

駐車スペースは公園や自転車レーンへ

ノルウェーの首都オスロでは2019年の1年間で、市内で交通事故により死亡した人の数は1人だったことが明らかになった。米国の自動車情報サイト「ジャロップニック」によると、自動車がフェンスに激突してドライバーが死亡したものだ。

人口約67万3000人のオスロで、交通死亡事故が1件と少なかったのには、大きな理由がある。同市では、2015年から2019年までの計画で、段階的に市内への自動車乗り入れの制限を進めていたのだ。

その一環として、市内中心部にあった駐車場約700カ所を2018年末までにすべて撤去した。これらの駐車場は現在、自転車専用レーンや小さな公園、ベンチなどに生まれ変わっている。体に障害のある人などで移動に必要な車や、店舗へ物資を配送するトラック、緊急車両などは乗り入れ禁止の対象外だ。また、電気自動車を充電するための駐車スペースは残されている。

さらに、厳しいスピード制限も設けられた。このような政策により、自動車は市内中心部に乗り入れをせず、環状線で迂回するようになったという。死亡事故の激減は、こうした取り組みが奏功したのだ。

空気汚染の緩和や炭素排出削減を目指し

都市部への自動車乗り入れを禁止とする動きは、世界的に広がりを見せている。スペインのマドリッドも、市内中心部への自動車の乗り入れを禁止とする方向へ動いており、フランスのパリやギリシャのアテネ、メキシコのメキシコシティでも、2025年までに都市中心部へのディーゼル車の乗り入れを禁止にする計画を立てている。モロッコのフェズには、都市部としては世界最大とされる「カーフリー・エリア」がある。

また、渋滞緩和を目指し2003年から「渋滞税」を導入している英ロンドンでは今年3月から、英国内で初めて、自動車の乗り入れを終日禁止とする取り組みを試験的に開始する。英フィナンシャル・タイムズ紙によると、当初は金融街の一角にあるビーチ・ストリートのみが対象となるが、2022年までには、自動車の乗り入れ禁止を金融街全域へと拡大する予定だ。ロンドン市はまた、2030年までには金融街一帯のスピード制限を時速15マイル(約24キロ)に落とし、2044年までには交通量を半減させたい考えだ。

市の中心部から自動車を締め出す取り組みの目的は、市によって異なるようだ。オスロの場合は、「(車が主役だった)道路を人に返そう」というのが狙いだったとしている。

一方で、空気汚染の緩和や二酸化炭素排出の低減を実現するためという都市もある。例えば英ロンドンでは、前述の通り金融街で交通規制をすることによって、2030年までに金融街での空気汚染の解消を目指している。また、中世からの歴史が息づく英北部の都市ヨークは昨年12月、3年かけて市内中心部から自動車を排除する計画を発表したが、その目的は、二酸化炭素排出の削減だ(英ガーディアン紙)。

「カーフリー」をめぐる議論

とはいえ、自動車がまったくない「カーフリー」の実現は、簡単にはいかないようだ。反対意見もないわけではなく、例えば英国ドライバー協会のヒュー・ブレーデン氏はBBCに対し、渋滞が起こるのは「都市計画がお粗末だから」であり、自動車の乗り入れを規制するのではなく、もっと駐車場を増やすべきだと主張した。

また、マンチェスター大学で都市計画を研究するランスフォード・アチャンポン博士は、「自動車を人から取り上げるのであれば、代わりになるものを提供しなければならない」と指摘する。

環境意識の高いオスロでさえも、自動車の乗り入れ制限には、市民の間で多くの議論がなされたという。米ニューヨーク・タイムズ紙によると、制限にもっとも反対したのは、地元で商業を営む事業者たちだった。車が減るということは、買い物客が減ることにつながると懸念したのだ。

そのため市側では、完全な乗り入れ禁止ではなく、「出来る限り減らす」という方向で対応した。つまり、自動車の乗り入れを全面的に禁止とするのは一部の道路とし、住民の車や事業で必要な車両は禁止の対象から除外した。また、市民の便宜を図るため、トラムや地下鉄の本数を増やし、運賃を下げた。このような対策のおかげか、オスロでは、蓋を開けてみたら新たに歩行者用となった通りでは、乗り入れ制限前と比べ、買い物客はむしろ増加したという。

一般的に「カーフリー」という概念は、都心で暮らし働いている、車の所有にも関心が高くない若い世代のものではないかという意見もあるようだ。しかしカーフリーへの取り組みをまとめたパンフレットの中でオスロ市は、車を減らし安全な街づくりをすることで、高齢者にもやさしい都市になると説明している。

記事元:Newsweek

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