
参照:毎日新聞
徳島県がサイクリング客誘致のために設定した3泊4日のコース「自転車王国とくしまGo aroundコース」に、専門家から「連結部分の山道がかなり厳しく、とても観光向けでない」と疑問の声が上がっている。県担当者は設定前にコースを試走しておらず、「観光誘致したい全地域を走ってもらおうとすると、こういうコースになる。各地域の代表コースの間は車で移動するなどして走ってもらいたい」と一部は車で移動するよう勧めている。【稲生陽】
県は全国有数の糖尿病死亡率の返上を目指し、県民に国が推奨する1日15分以上の運動に取り組んでもらおうと、2009年度からサイクルイベントを開いてきた。総距離や高低差、拠点施設の駐車場台数なども明示した25の公式コースも専門家と協力して設定。100以上のコースを試走し、初心者も安全に走れることを重視して選んだという。
ところが、18年度からはスポーツ庁が推進する「スポーツツーリズム」(スポーツを通じた観光誘致)に取り組もうと県外向けPRも開始。県北、県南、県央、県西の4地域にある公式コースから各1コースを選び、山間部などの連結部分(計約310~390キロ)も含め3泊4日で巡る観光コース「Go aroundコース」(全長520~600キロ)を設定した。19年12月には高精細4K映像のPR動画(5種類、各2分間)も動画投稿サイト、YouTubeに公開。英語と中国語の字幕付き動画もあり、外国人客取り込みに期待を寄せる。
ただ、普段から練習していない人が1日に100キロ以上走るのはそもそも難しいとされる。険しい四国山地の山間部だけに100メートルを超える起伏もある東京―大阪間に匹敵する距離を、県の提案通り3泊4日で走るのは、上級者でも苦しいという。公式コース設定に協力した専門家の1人は「初心者も走れる代表コースに比べ、連結部分が長すぎる。上級者でもとても観光できる体力は残らず、慣れていない人なら事故やけがにつながる」と話す。県スポーツ振興課担当者は「過去に各ルートを走った経験はあるが、今回改めて走ってはいない。確かに、一気に走破するのはかなりレベルが高いかもしれない」と認める一方、安全性などについては「地図作製を委託した業者が車で走って確認しているはずだ」と釈明している。
連日100キロ厳しい
自転車施策に詳しい徳島大の山中英生教授(交通工学)
これらの道路がつながっていることを示すのは、1カ月かけて1000キロ走ったりする海外のサイクリスト向けには意義がある。連結ルートや3泊4日という日程にこだわる必要はないが、確かに連日100キロ以上走るのは厳し過ぎるし、観光も難しいかもしれない。
記事元:毎日新聞